仕事を続ける意思を示す

解雇通知書と解雇理由の証明書を受け取った後、再び知人の弁護士の事務所を訪れました。次にどんなアクションを起こすのか?ということを相談するためです。

不当解雇の疑い

知人は、私が持参した解雇理由の証明書と就業規則を照らし合わせながら、「これは不当解雇の疑いがある」とつぶやきました。そして次のアクションが告げられたのです。それは「内容証明郵便」にて、退職の意思がないことを伝えることでした。

内容証明郵便

内容証明郵便は、誰がいつ、誰に対して、どんなことを言ったのか?ということを、郵便局に証明してもらう特殊な郵便です。そのため、大きめの郵便局でないと受け付けてもらえないとのことでした。

知人に作成してもらった文書を持って、駅前にある郵便局に行きました。どこの郵便局でも良いわけではないので、事前にネットで調べたのは言うまでもありません。

料金は通常郵便の82円と書留料の430円、内容証明料の430円と配達証明料の310円です。その他にもオプションとして、速達料の280円もプラスしたので、合計で1,532円になりました。ずいぶん高い郵便だな…と思いましたが、こちらも裁判の時の証拠として使えるようなので、ケチってはいられません。

会社との交渉と転職活動

会社に内容証明郵便が届いたことから、解雇の撤回を求めるための交渉が始まりました。それと同時に、そのまま解雇された場合を想定して、転職活動も開始しました。転職活動は会社には内緒にしておきたいので、専門のエージェントに登録し、メールや電話でやり取りをする形を選びました。

解雇通知書の請求

ある日突然、上司に会議室に呼び出されて、「会社を辞めて欲しい」と言われた私は、驚きのあまり言葉を失いました。

会社に損害を与えるようなことは一切してませんし、始業時間に遅刻することもなく、退社時間もきちんと守り、不必要な残業もしていません。セクハラやパワハラなどのハラスメントも一切身に覚えがありません。

とりあえずその場で返事をするのは避けて、知人の労働問題に詳しい弁護士に相談しました。自分一人の力ではどうにもならない問題だということだけは判断できたためです。

退職勧奨

「ああ、それは退職勧奨だね」と、知人の弁護士は即座に答えました。
要するに、単に「会社を辞めてくれませんか」と言われただけの話であり、法的な拘束力は一切ないそうです。

その後、私が返事を曖昧にしておいたことや、辞める意思を示していないことも話しました。今の仕事に不満はないため、できれば会社を辞めたくないし、退職せずに済む方法がないだろうか?と。

「それならこのやり方が使えるよ」と、不敵な笑みとともに知人からのアドバイスが始まりました。

解雇通知書の請求

アドバイスを受けた翌日、会社に対して解雇通知書の作成を求めました。同時に、解雇理由の証明書もお願いしました。

解雇通知書や解雇理由の証明書があることで、「解雇された」ことに対する客観的な資料が手元に揃います。その後裁判になった際にも重要な証拠書類となるため、まずはその2つの入手をすることが、知人からのアドバイスのひとつでした。

自己都合退職と会社都合退職

退職には大きく分けて2種類があります。自己都合退職と会社都合退職です。

自己都合退職

退職者自身の都合で退職することです。転職や家庭の事情、病気や怪我、人間関係など様々な理由があります。自己都合退職の場合、失業給付がされるのは手続きが済んでから3ヶ月以上経過してからとなっています。

会社都合退職

解雇やリストラ、企業の倒産などによる退職が該当します。契約社員の場合には、契約期間満了も会社都合に含まれます。会社都合退職の場合には、失業給付を受けられるまで、手続きの完了後1ヶ月程度です。

退職金の給付率の違い

自己都合退職と会社都合退職では、退職金の給付率が変わります。退職金は、基本給×勤務年数×給付率で算定されます。平均的な給付率は、自己都合退職で58%、会社都合退職で67%と言われています。

例えば勤務年数10年、基本給が30万円と仮定します。

30万円×10(年)×58%(自己都合退職)=174万円
30万円×10(年)×67%(会社都合退職)=201万円

自己都合退職と会社都合退職では27万円の差額が生じます。

解雇ではなく、自主的に退職することを求めるのは、退職金の算定方法も影響しているのではないか?とも思われます。

おわりに~後日談

解雇の撤回を求める交渉の結果、不当解雇が認められたことから、会社都合退職という形で退社することになりました。すぐに次の就職先も決まっていたこともあり、無理に元の会社に残る必要がなかったためです。

私の場合は、知人に弁護士がいたので、不当解雇について逐一相談することができたことが大きかったと思います。裁判も想定した上でのアクションが起こせたのはもちろんのこと、精神的な部分での強みがありました。

もし私と同じように、不当解雇かも?と悩んでいる人であれば、できるだけ早い段階で、弁護士に相談することをおすすめします。

参考:労働問題相談所

パワーハラスメント

解雇の撤回を求める交渉を始めてから、上司からはあからさまなパワーハラスメントが行われるようになりました。といっても、暴言を吐かれたり、理不尽なノルマを課せられたということではなく、周囲からの「無視」でした。

まず朝の出勤時に、こちらから「おはよう」と挨拶をしても、返事がありません。聞こえなかったのかと思い、もう一度「おはよう」と言っても、やはりノーリアクションです。上司の顔を見ると、わざとらしく目をそらしています。「あ~これは、嫌がらせが始まったのかな」と。

知人の弁護士からは、「おそらく何らかの嫌がらせがあるよ」と、アドバイスを受けていたので、それほど動揺せずに済みました。といっても、周囲の人たちとまるっきり会話をしないというのも「何か変だな」とは思いましたけど。

とりあえずは淡々と仕事をこなしながら、時々会議室での解雇の撤回のための交渉をしつつ、時間が流れていきました。それにしても、「周囲の無視」というのは、なかなか証拠が残りにくいので、相手(会社)もいろいろ考えているのだなと感心してしまいます。

交渉の際には必ずスマホでやり取りをこっそり録音しておき、証拠を集めるように心がけました。とはいえ、少しずつ少しずつ精神が削られていくのを感じるようになりました。

ちょうど転職のエージェントから良い条件の職場の紹介などが続いたことから、会社に残ることよりも、退職する方が良いのかな?とも思うことが増えてきました。

ただしこちらからは絶対に「辞める」とは言わないことだけは守りました。こちらも交渉時に録音をしている以上、相手も録音している可能性があります。うっかり言質を取られてしまいますと、解雇から自己都合退職に変わってしまうためです。

退職金の受け取り要求

解雇の撤回を求めるための会社との交渉がスタートした訳ですが、知人の弁護士からは、交渉の際に「これはしない方が良い」と言われたことが3つありました。

1.退職金の請求
2.有給休暇の買い取り
3.解雇予告手当の請求

1.退職金の請求

私の場合は、会社を辞めるのではなく、復職することが前提だったので、退職金の請求をしないことが重要なポイントのひとつでした。会社に残りたいのに、「退職金をください」というのは辻褄が合わなくなるためです。

2.有給休暇の買い取り

基本的には有給休暇の買い取りというものはできないのですが、退職者に限り、交渉が可能な場合もあるようです。ただこれは解雇が決まってからでもできることなので、特に何も話さないようにしました。

3.解雇予告手当の請求

解雇をする際には、30日以上前に該当者に告げることが義務付けられています。もしくは、30日分以上の平均賃金分を別途解雇予告手当として支払う必要があります。こちらも退職を前提とした交渉ではないので、請求してしまいますと、整合性が取れなくなります。

退職金の受け取り要求

会社との交渉では、「退職金の受け取り」を要求されました。同時に保険証の返還や、失業保険の給付手続きに必須の離職票の受け取りも求められました。

知人の弁護士に相談した結果、これらに関しては、とりあえず受け取っておくのは問題がないとのことです。ただし、「復職したいのなら、もらっても使うなよ」と釘を刺されましたけど。

そのため、うっかり使わないように、あまり利用していない銀行口座に移したのは言うまでもありません。カードの引き落としとかで使ってしまったら大変ですからね。